初心者には簡単に~もっと深く知りたい。手作りパンキッチン。

パン作りをする人のためのパンキッチン

自然放牧のチーズを探せ!

green mugimugi(前回)と同じ広島県三次市内にある牧場「三良坂フロマージュ」を訪れる。

ここは、mugimugiの野島シェフがそのおいしさに惚れ、
ずっと応援してきた牧場だ。

フロマージュ・ド・ミラサカのおいしさ。
豊かでやさしい乳の味とともに、この山から発せられるのと同じ青い夏草の香りがチーズからしていた。リコッタチーズの甘さはまるでプリンを食べているように錯覚する。
こんなチーズが一体どうやって作られるのだろう。

牧場主の松原さんとともに、車で急な坂道を登って牧場へ行く。
放牧地というより山。
まるで牛のための公園のように、光が当たるよう適度に木は伐採され、下草が豊かに生えて緑の丘を形作っている。山に放たれた牛が草を食み、蹄が土を耕し、糞が肥料となる。そのようにして、うつくしい循環が生まれることで、自然に生態系が保たれているのだ。

東京ドーム2個分の面積(8ha)に飼われる牛はわずか8頭。牛1頭につき1haの面積を必要とするのは、購入した飼料ではなく、ぜんぶ自然に生えた草を食べさせているからだ。だから、チーズからは自然な草の味がする。四季を通して、その味は移りいく。

「牛は何百種類の牧草を体調に合わせて食べていく。
だから、毎日、味が変わるんです。
春にはたけのこをぱりぱり食べる。
そういうときは、チーズからもたけのこをゆがいたときの匂いがします」

ここではシェーブル(山羊のチーズ)も作られる。

山羊がいる牧舎は、野島家の子供たちの遊び場になっているようで、自由に撫でたり、睨み合ったり、勝手に戸を開けて外に出したりとやりたい放題だった。ペーターとハイジを彷佛とさせる幼い兄と妹。
こんなふうに子供の頃から動物たちと戯れて育った子供たちはどんなチーズメーカーになるかと末恐ろしい。

シェーブルは癖があって苦手、という人もいるかもしれない。
だが、こと三良坂フロマージュのシェーブルを食べれば、やみつきになってしまいこそすれ、そんな拒否反応は起きないかもしれない。
山羊の乳らしい香りはあくまで軽やかで快く、さわやかな酸味と相まってただただ魅力的なのだ。

松原さんの言葉でひどく胸に響いた言葉がある。

「購入飼料なら、たとえばとうもろこし15キロで30リットルのミルクが得られるんですけど、それってすごく効率悪い。
とうもろこし15キロあれば、人間が1ヶ月食べられる。
トラクターに、乾燥機に、化石燃料も必要ですし。
人間が食べることのできない雑草を家畜に食べさせれば、すごく効率的。
朝、山から降りてきた牛の乳を絞る。それが本当の酪農だと思います」

地球環境にもやさしい農業。

昔ながらのプリミティブなやり方こそ実は未来につながっている。

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店名 三良坂フロマージュ
電話番号 0824-44-2773
営業時間 10:00 ~ 18:00
定休日 日曜日(臨時休業あり)
住所 広島県三次市三良坂町仁賀1617-1

TEXT & Photo:池田浩明

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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