2017年4月、日本パンコーディネーター協会主催【塩でパンはこんなに変わる!製パン&知識セミナー】が開催されました。パンに欠かせない原材料はいくつかありますが、塩もそのひとつ。セミナー内容から、製パンにおける塩の役割を抜粋してご紹介します。
◆パン作りにおける塩の役割
・風味を良くする(塩味)
・雑菌の繁殖を防ぐ
・生地に弾力や伸展性を与える
・発酵を適切に調整する
塩はパン生地のグルテンを引き締めてコシをつけてくれる働きをしてくれるため、塩の入らない生地は緩んだままで発酵具合もわかりにくくなります。
また、パンの味わいにも大きく影響します。例えばイタリア・トスカーナ地方発祥の無塩パン、“パーネトスカーナ”。濃い味の料理と食すことを前提に作られるパンですが、塩味のないパンはそれだけでは味気なく感じてしまいます。
◆<塩の種類違い><投入のタイミング>によるバゲットの食べ比べも
食卓塩/雪塩/藻塩/ゲランドの塩、この4種の塩で仕込んだバゲット。
食卓塩は塩味が鋭角、雪塩はマイルド、藻塩はふくよかな、ゲランドは食べ慣れた味、というのが私の感想。会場内の好みは食卓塩以外の塩で分散していましたが、個人的には藻塩が好み。アトリエでも藻塩を使用しています。
オールイン(副材料と同じ時に投入)のバゲットと、溶解タイプ(塩を水で溶いて投入)のバゲットでは、後者は味わいを淡く感じる印象。この違いは塩の味をどう表現するかというテクニックとして興味深いですね。
興味深いといえば<粒と塩味による使い分け>。ソルトソムリエによる塩とパンの関係性も掘り下げて紹介されました。
リッチな生地 | |
粒が小さく塩味が強い バターや砂糖が多い生地に負けないしっかりとした味が合う。 海水塩(せんごう塩/再生加工塩)がおすすめ |
おすすめ シママース/北谷の塩/食卓塩(精製塩) など |
リーンな生地 | |
粒が小さく塩味がまろやか ミネラルの多いものが合う 海水塩がおすすめ |
おすすめ 雪塩/セルマランド/ゲランド/海人の藻塩 など |
味付けのアクセント(後入れ) | |
粒が大きく塩味がまろやか 海水塩(完全天日塩/塩の花)がおすすめ |
おすすめ カマルグ・ペルル・ド・セル/海の果実 など |
トッピング 仕上げ用 | |
粒が大きく塩味の強いもの。 塩パンやフォカッチャなどに、岩塩や湖塩がおすすめ |
おすすめ シベリア岩塩(クリスタル)/パタゴニアソルト(大粒) など |
当セミナーで製パン講習の講師をされた横浜・ブラフベーカリー栄徳剛シェフは、「塩の選択肢は増えているのに製法は変わらない。塩を水に溶かしてミキシングする理由は “均一に塩を混ぜ込むため” だと教わってきた。けれど教えられたままの製法を続けるだけがいいのだろうか。塩は後入れの方がはっきり感じられて、水に溶かした場合は薄まって感じる。後塩法で味を出せるのなら、もしかしたら減塩も可能になるのでは。今後はそんな可能性も考えていきたい。」と話されました。
味はもちろんのこと、グルテンを引き締める役目や雑菌の繁殖防止など、パンに欠かせない基本材料の“塩”。パンを習い始めたばかりのころは意味もわからず入れていたような気がします。もしも入れ忘れたかも…と生地捏ねの最中に気付いたら、ちょっと生地を食べてみて確認してみてくださいね。
主催:一般社団法人 日本パンコーディネーター協会
塩講座:塩の専門店 塩屋
製パン技術講師:ブラフベーカリー 栄徳 剛 氏
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。