京都の人気シェフ、人気パン講師が一同に会した豪華な講習会、「手づくりパン屋さんのパンLesson!」。
参加された講師の方々
小島秀文シェフ(雨の日も風の日も)、小林健吾シェフ(志津屋)、内田雅彦シェフ(ココキラリ)、松岡英樹シェフ(コネルヤ)、斉藤康憲シェフ(ホテルグランビア京都)、花籠賢俊シェフ(HANAKAGO)、鍵井真紀さん(てごねぱん教室cui)、青山里香さん(手ごねパン教室ル・アンジュ)
今回はその中からHANAKAGOの花籠賢俊シェフによる「レ・ボストック」の講習を紹介する。これは、ブリオッシュのアレンジ術。元々パティシエとしてフランスに渡った経験を持つ花籠シェフならでは、前日の硬くなったパンをお菓子に変えてしまうアイデアだ。
ブリオッシュをお菓子にアレンジ「ババ・ア・ラ・ノルマンディー」
ババ(パンをシロップに漬けたもの)にりんごのコンポートとカスタードを合わせた一品。ノルマンディでも働いていた経験を生かし、旬のりんごを使ってノルマンディ風に仕立てる。
はじめにりんごのコンポート作りから
「りんごはカットしてあります。形を崩したほうがいい場合、紅玉にしてください。ふじは崩れにくいです」
りんごにグラニュー糖をまぶす
「浸透圧をよくするため、まず砂糖をまぶします。レシピには『適量』と書けないので、20%と書きました。でも、りんごは天然のものなので、必ず味見して砂糖の量を決めてください。自分がどれぐらい甘くしたいのか考えて」
熱した鍋にりんごを加える
「中火でキャラメリゼして苦味を入れます。砂糖を焦がし、しっかり色をつけてあげる。フライパンだと火通りがいいので、一気に色がつくでしょう。あとでオーブンで加熱するのでりんご自体にはそこまで火を入れる必要がありません」
耐熱容器に移し替え、200℃のオーブンへ
「オーブンでコンポートを煮込みます。今回はシリコン容器で。ふたをして密閉します。固形のシナモンを入れるとしたらこのタイミングで。シナモンパウダーなら最後にふってください。固形を入れたほうが蒸し焼きになって香りがつきます。今日はババにするので、スパイスは使わず、このままオーブンに入れましょう」
コンポート作りは前日に行うのがおすすめ
「1日置いたほうが、甘さが中まで入ります。今日はスパペラ(スプーンやヘラ)とかで混ぜて、わざと崩れさせます」
ブリオッシュを浸すババシロップを作る。100%の水に対し、50%のグラニュー糖。そして、10%のパイナップルジュース。
「りんごジュースだと甘くなりすぎるので、僕はパイナップルジュースをを入れます」
すべてを鍋に入れて沸騰させ、バニラとクローブを加えて、香りづけする。冷めたら、25%のポモードノルマンディ(カルヴァドス[りんごの蒸留酒]から作ったノルマンディのリキュール)を加える。裏ごしすれば、ババシロップの完成。
いよいよ仕上げ
「ブリオッシュに穴を開け、シロップにしっかりと漬けたら、クレームパティシエール、りんごのコンンポートを盛ってください。ふたをかざってあげるとサバランになりますが、今回はプティフール的な感じにしました」
クレームシャンティ(ホイップクリーム)も添えれば、より贅沢な味わいに。
「フランスでは食べるとき『追いラム』します。ラムの原液をわーっとかけながら食べる」
追いラム…なんて甘美な食べ方。いかにもフランスらしい大人の味だ。
(カフェシロップとババシロップ)
もう一品はボストックティラミス
カフェシロップにつけたブリオッシュにクレームダマンドを塗り、オーブンで焼く。その上に塗るのは、クレームティラミス。
「まず、ガナッシュを作っていきます。完全沸騰させた生クリームに、刻んだホワイトチョコレートを入れます。空気が入らないように、ゴムベラで真ん中からゆっくり混ぜていく。流動性があると空気が入りやすいので、あまり動かさずに。真ん中が混ざったらまわりを集めてきてください。ガナッシュクリームができたら、そこにマスカルポーネも合わせます」
クレームティラミスを塗って、ココアパウダーをふったらできあがり。
写真は右からババ・ア・ラ・ノルマンディ、ボストックティラミス、自家製のジェラートを盛ったブリオッシュ・コン・ジェラート。
残ったブリオッシュも手をかければここまでうつくしく、おいしくなる。花籠シェフの講習には、パティシエならではの技術と知恵と発想が詰まっていた。
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
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