木々が色づく11月を過ぎるとクリスマスの足音が聞こえてくるようです。シュトレンがクリスマスシーズンの楽しみになっているのは私だけではないはず。
クリスマスを待ちわびる、アドベントとして食されてきたシュトレン。正式には「クリスト・シュトレン」と呼ばれる、ドイツ発祥の伝統的な発酵菓子。またフランス・アルザス地方でもスペシャリテとして作られています。
シュトレンを意味する“杭”、“棒”にはキリスト教の影響がある、と本で読んだことがあります。そして真っ白な粉糖を塗した楕円形のシュトレンは、幼いキリストが白い“おくるみ”に包まれた姿に見立てていると言われています。
レシピの原点
冬の味わいとも言える、バターたっぷりの生地にナッツやドライフルーツをふんだんに混ぜ込んだ配合は、ドイツの歴史や、古来からの習慣が息づいた伝統も関係しているようです。
今は簡単に手に入れられるナッツやドライフルーツも、かつては大変貴重な食材でした。シュトレンを貯蔵し家族で少しずつ分け合いながら豊穣への願い、自然への感謝の気持ちを込めた、特別な食べ物だったのだろうと思います。
なぜ長期保存できるのでしょう
長期間保存ができると言われるシュトレンは、その配合や製法に理由があるのです。
ドライフルーツなどを洋酒に漬込むのは、味わいが熟成され美味しさを増すだけではなく、アルコール成分が腐敗を防ぐ働きをしてくれるため。しっかりと焼きこんだ後、“澄ましバター”に潜らせると生地全体を油脂が包み酸化を防いでくれます。さらに砂糖や粉糖を全体に塗し固めるのは、油脂の酸化を防ぐため。
ヨーロッパでは湿度も気温も低いため冷暗所での保存が可能ですが、湿度・気温共に高い日本では冷蔵庫での保存をおすすめします。
※日持ちについて:家庭製パンのシュトレンは製法によっては一般的なパンと同じで、数日中に食さなければいけないものもあります。店で販売されているものについては賞味期限を参考にしていただければ問題ありません。
上手な切り方と保存方法
シュトレンを切り分けるときは、棒状の中央辺りから端に向かって薄くスライスを。
まだナイフの入っていない左右の生地をぴったりくっつけてから密着ラップをし、ジップ付き袋などに入れて冷蔵庫へ。カットした断面が空気に触れないようにするのがポイントです。
日持ちはしますがスライスし始めたら、できるだけ早めにお召し上りを。私(アトリエ)も12月はシュトレンの季節。おいしく作れますように。
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。