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パン作りをする人のためのパンキッチン

家庭用電気オーブンの天板ひとつで簡単に焼ける?!カンパーニュの技を調査

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」

東京・自由が丘のクオカスタジオで行われた、ブラフベーカリー 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」。

パン職人、パン講師の人気者2人がタッグを組んで行う「変換講習会」とは、プロのベーカリーの技を、ご家庭で簡単にできるよう落とし込もうというもの。

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」

今回作るアイテムは、その名も「春よ恋で家庭用電気オーブンの天板いっぱいに焼くカンパーニュ」。

高橋「私がリクエストしました。パリのデュ・パン・エ・デジデのパン・デ・ザミみたいなパンが作りたくて」

パン・デ・ザミといえば、世界中のパン職人に影響を与えた、でっかく焼き、旨味と風味が詰まったパン。あんなパンが家で作れたらどんなに楽しいだろう!

使用したのは北海道産の新麦春よ恋(江別製粉)(もちろん新麦でなくても問題なし)。

「春よ恋85%、全粒粉15%、イースト水3% *1、海人の藻塩2%、水75%をオールインします。捏ね上げ温度は23℃」
*1イースト水は、30℃のぬるま湯10gに対し、イースト(サフインスタントドライイースト赤ラベル)0.5gを入れて作る。

モルトを入れないのは、国産小麦の中でも損傷でんぷん(酵母がエサとして食べやすいので発酵が進みやすい)が多い春よ恋ゆえ。

力を使わず、だまにならない新しい手ごねを栄徳シェフが教えてくれました

ここで、栄徳シェフは手ごねで、高橋さんはニーダー(キッチンエイドでも可)で低速6分と、同じ生地を別々の仕方でこねていく。

栄徳シェフの手ごねのやり方がユニーク。
「手ごねするとだまになるのが嫌いなんです。今日は新しい方法を考えてきました」

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」

ボウルの中で最初に粉と水をある程度合わせたら、生地の端をつかんで持ち上げ、揺さぶりながら、もう一方の端を落としていく。重力を使ってグルテンを作っていく方法だ。

「最初はグルテンが出てないので、ぼそぼそしてますが、だんだんなめらかになってきます」

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
高橋さんの低速6分と同じぐらいのタイミングで終了。手ごねというと力を使うイメージがあるが、これだと疲れ知らず。画期的な方法ではないか!

20分おいてパンチ、また20分おいてパンチ、さらに30分おいてパンチ(最後のパンチは様子を見て入れても入れなくてもOK)。

発酵状態を見極める

このあと、翌日まで一晩生地を寝かせる。25℃で12~18時間の一次発酵。どのような根拠でこの温度と時間になるのか、栄徳シェフから解説。

「どの温度帯で発酵させようか考えるときは、酵素によって糖が分解されて甘みが生成するのと、酵母が食べることで糖分が消費されることの両方を考えないといけないんです。酵母が少ないときは、エサになる糖の消費が少ないですよね。だから高い温度で大丈夫です」

つまり、酵母(イースト)の量が少なければ、冷蔵庫の中に入れたりしなくても、酵母の活動が活発な25℃前後でOKということ。この温度帯にはメリットがある。

「でんぷんを糖に分解する酵素『アミラーゼ』は高い温度帯できいてきます」

この温度では、酵素が活発に動くので、濃厚な味わいを期待できるというわけ。

さて、一次発酵を終えた生地はどうなっているのか? 栄徳シェフ、高橋さん、クオカスタジオさんと、それぞれが前日に生地を仕込んだ。

「昨日の夕方6時にこねあげて、室温24℃で置いたものをもってきました」と高橋さん。
「こっちは18℃ぐらいです」と栄徳シェフ。

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
3つの発酵状態はまちまち。であるがゆえに、発酵状態の見極めにひじょうに参考になる。
「左のはいきすぎ、真ん中のはもうひと工程あるとどんぴしゃり。右のはこのまま焼くと弱いです」

発酵が完了したら、いきなり焼成できるのが、このパンのいいところ。

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」

クープを入れる?入れない?の選択

「天板にオーブンシートを敷いて、生地を広げてください。私は端を底に入れちゃってます。生地の上に粉をかけて、クープを入れます」と高橋さん。

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」

「僕はクープ入れないです。クープを入れると、縦にぼこぼこ空いたかっこいい気泡になる。クープを入れないと詰まった感じになります。かっこいい気泡じゃなくて、詰まったほうが、引きがないパンになるので好きなんです」と栄徳シェフ。

クープがかっこよく、気泡ぼこぼこのものをよしとしがちだが、クープを入れないことも選択肢としてある。これもパンのおもしろさだと思う。

焼成は300℃に設定したオーブンでスチームを入れて25~30分。
「皮はきっちり焼かないと、味ものってこないです」

高温で焼くのは、パン・デ・ザミの特徴。皮を焼き込むことで生まれた風味が内部まで染み込んでパンの味わいになる。

 栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
(手前のクープなしが栄徳シェフ、左奥のクープありが高橋さん。右側はキタノカオリを使ったミルクブレッド)

協力・手作りお菓子とパンの専門店 cuoca
協力・手作りお菓子とパンの専門店 cuoca http://www.cuoca.com

栄徳剛シェフ、わいんのある12ヶ月 ・高橋雅子さんによる「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」
栄徳剛
「ブラフベーカリー」オーナーシェフ。
2号店「日本大通り店」と、カフェ「アンダーブラフコーヒー」が相次いでオープン。いま乗りに乗っている。
http://www.bluffbakery.com

高橋雅子
予約のとれないパン教室として知られる「わいんのある12ヶ月」主宰。最新刊「冷凍生地で焼きたてパン」(天然生活ブックス)が発売中。

TEXT & Photo:池田浩明

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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