東日本大震災復興支援「第16回チャリティー製パン講習会」(10月4日、京都麻袋)に、大阪・寝屋川の人気店ブレッドスタイルソプラノの宮田顕(みやたあきら)シェフが登場。披露したのは、梅ひじき。まるで和食のようなパン作りの秘密をレポートする。
宮田シェフのパン作りの肝 発酵種と酒粕
使用する粉は、フランスパン用粉(日本製粉ジェニー)に、15%のライ麦粉(日本製粉特きりん)、そして5%の玄米パウダー。インスタントイースト、ライ麦由来のルバンリキッド(日仏商事アロムルヴァンリキッド)に、発酵種も加えて、発酵の風味を多角的に足していく。
「発酵種はフランスパンを一晩寝かせたものを30%入れます。普段作ってらっしゃるフランスパンの配合で大丈夫です。入れるタイミングは生地がある程度水和した段階です」
さらには酒粕も。宮田シェフのパン作りの肝となっている部分だ。
「酒粕を入れる理由は、焼きあがったとき香りがいいこともそうですが、保湿性があるので翌日のぱさつきを防ぐ点。食パンもしっとり感を保つことができますし、フランスパン、ライ麦パンでも日持ちが長くなります」
そして、梅ひじきが登場。
「こねてある程度つながった状態で入れます。生地に直接まぜてください。だいたい2割ぐらい。梅は少なめ、ひじきは多めのほうが酸味はちょうどいいです」
「家庭で作る場合は、お惣菜コーナーのひじきやかりかり梅をはさみで切れば使えます。柴漬けやキューちゃん漬けを入れても、塩気がきいてビールに合います。手ごねの場合、できあがった生地を刻んで重ねて…と繰り返せば、具材が混ざっていきます。切れてしまうんですが、発酵してるうちにまたつながっていきます」
「一次発酵は28℃で90分。45分経ったらパンチを入れます。硬めの生地ですので、パンチを入れなくても、問題はありません。45分の時点で冷蔵庫(5~8℃)に入れれば、翌日使うことも。その場合、少し室温に戻してやわらかくなってから使用すればふくらみが出やすくなります」
分割は、次の作業のしやすさを考えて行うことが基本。
「70gで分割。硬いので分割しやすい生地です。手のひらの上でいいので細長く丸めてください。最終的に麺棒で伸ばして巻いていくので作業しやすいように。15分~20分後に成型するので、それがしやすい加減の強さや形にすること」
成型は、綿棒で伸ばした生地をぐるぐる巻いて行う。
「バターロールの成型のようにしていきます。
麺棒と同じぐらいの長さに伸ばして、湯せんで溶かしたバターを塗ります」
「あとは中心から手前に(上から下に)巻いていきます。硬めの生地で成型しやすくなっています。伸ばすときに長ければ長いほど巻数が多くなります。脂がついているのでなかなか巻きづらいですが、少し引っ張りながら巻くときれいに巻けます」
日本人なら誰でも好きな味 パンはお米という感覚
65分の二次発酵後、スチームを入れて13分焼けばできあがり。
カンパーニュのような生地は表面がぱりぱりとして、むぎゅっとした食感。
梅とひじきが意外にもパンによく合って、日本人なら誰でも好きな味になっていた。
「食事は和食が多いです。そこから味付けや組み合わせのヒントをもらうことが多い。白米が食べられないので、食事はバゲットとおかずが基本。納豆を食パンにのせたり、焼き魚を食べながらだったり。パンはお米という感覚」
この日は他にも、和食屋さんのおつまみから発想した「大根と大葉のスティックサンド」も披露。岩のりを塗ったパンに、大根の素揚げと大葉をはさんだもの。パンの食べ方の可能性を広げてくれる提案になった。
第16回チャリティー製パン講習会の模様
伊原靖友シェフ(ZOPF)によるクローネ。オレンジピールやマカダミアンナッツなどドライフルーツをミルフィーユ状に積み重ねる
山﨑豊シェフ作のブリオッシュポンム。被災地・陸前高田で復興支援活動を行うLAMPのりんごを使用
井上克哉シェフ(ブーランジェリーオーヴェルニュ)によるベラベッカ。外生地で具材入りの生地を包む工程
ベラベッカ
クローネ
TEXT & Photo:池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
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