日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。
前々回”レシピの分量で具材をアレンジしてみたくなったら”で書いたように、2月のアトリエはクッキーパン(メロンパン)でした。アトリエ流ではありますが、成形~2次発酵におけるレッスン中の質問と対策をまとめています。
▼アトリエの生徒さんが作られたクッキーパン
▼Q.01
クッキーパンを作るのに、パン生地(以降パン)にグラニュー糖を塗したクッキー生地を載せて発酵器に入れたところ、焼く前にヒビ割れているクッキー生地ができてしまいます。なぜでしょうか。
▼A
バターが多く含まれているクッキー生地は緩みやすくて、すぐ柔らかくなります。湿度にも弱いとなると、パンにとって快適な湿度と温度はクッキー生地には邪魔、ということになります。
お店の厨房であれば1時間以上、ラックに差したまま常温で発酵させるところですが、教室や家庭の環境では難しい場合もありますね。
▼Q.02
では発酵器やオーブンの予熱機能で2次発酵をとれないのでしょうか。
▼A
時間や場所の制限がなければそのまま常温で置いてもいいですし、30~40分後にオーブンへ入れるなら、28℃~30℃辺りの温度で発酵させておきたいですね。
肝心なクッキー生地はどうするかと言うと、例えば30℃の発酵器に20~25分程(28℃なら30~35分程)パンだけを入れます。取り出してパンの上にクッキー生地を載せ、さらに常温で10分前後置いた後オーブンへ入れる方法です。
パンはある程度緩ませることができ、発酵中にクッキー生地がひび割れするリスクを回避して、焼成に持っていくのが今回のポイントです。
▼Q.03
クッキー生地を伸ばしてパンを包む成形ではないのですか?
▼A
ラップなどでクッキー生地を挟み、円形に伸ばしたらパンに貼り付けて一緒に丸く整える。グラニュー糖を塗して網模様を入れ2次発酵へ。ベーシックな手順のひとつです。慣れた人なら手早くできるかもしれませんが、成形で1つずつクッキー生地を伸ばして包む作業には時間がかかりますよね。
アトリエでは作業性や時間差を考慮して別の方法で作ります。成形ではパンを丸めなおすだけで発酵器へ入れます。クッキー生地は予め全て型抜きをして冷凍庫でスタンバイ。ここは私が事前に済ませています。クッキー生地は2次発酵の後半でパンの上にチョン、と載せるだけ。
最初と最後の発酵時間に時間差が生じてしまうデメリットをカバーするのに、この方法は有用ですよ。
▼Q.04
ところで、パンとクッキー生地の割合はどれくらいがいいですか。昔、分厚いクッキー生地のメロンパンに憧れていました。
▼A
今回は食べた時のバランスが良いように、クッキー生地をほんの少し薄めに5:4で作りました。ボリボリするような厚みのあるタイプが好きでしたら1:1が良いと思います。
クッキー生地の厚みは、薄めより厚い方が下に引っ張られる力に耐えられるのでより一層割れにくくなります。でも厚すぎるとパン生地が上に伸び難くなる可能性もありますし、少し食べにくそうです‥。
▼Q.05
配合が違うクッキー生地でも同じ方法、同じ時間で出来るのでしょうか?
▼A
アトリエではサブレ生地の配合で作っています。バター、グラニュー糖、全卵、アーモンドプードル、薄力粉。一般的なレシピと比べると全卵も少なめですしBPも入りません。伸ばして抜ける配合でしたら同じように出来るのかもしれないですね。発酵時間や温度はお伝えしましたが、ルセット(材料配合)によって異なるので手順を参考にしてくださいね。
みんな大好きなクッキーパン。たくさん作って、どれも同じ出来栄えに焼けたら嬉しいですよね。今回はアトリエでレッスンをするにあたり、どこで工夫できるか試行錯誤した対策法をご紹介しました。湿度・温度・時間・配合、さらには出来栄え。実に様々な要素が盛り込まれた菓子パンですね。
TEXT & Photo: Yumiko Sanda