初心者には簡単に~もっと深く知りたい。手作りパンキッチン。

パン作りをする人のためのパンキッチン

阿蘇の自然の中にある人気店「パンダイゴ」を調査!


熊本県南阿蘇村にあるパンダイゴは、阿蘇の自然の中にある人気店。熊本地震で被害を受け休業がつづいていたが、5月末の再オープンに向け準備が進められている。

ミナミノカオリを知り尽くしたシェフが作るベーグル

▼熊本製粉Premium T

オーナーシェフの上道大吾さんは、地元の食材や小麦を使って熊本を盛り上げることに熱心。昨年8月10日、熊本県玉名産小麦Premium T(ミナミノカオリ)の解禁イベント「熊本の新麦で食べよう」では「新麦べーグル」を披露した。ミナミノカオリを知り尽くしたシェフが作るベーグルとはどんなものか。製作過程に密着した。

ミナミノカオリのよさを教えようと、粉袋の中に手を入れて、粉を握ってみせてくれた。
「握ると固まるのがミナミノカオリの特徴。強い感じはしなくて、しなやかです」

▼ポーリッシュ種

このベーグルには3種類の種が入れられる。ホシノ生種はホシノ天然酵母パン種を30℃の温水で混ぜ24時間置いたもの。ポーリッシュ(ホシノ酵母生種から作ったもの)、自家製のルヴァンリキッド。さらに湯種も加える。
「種がお互いに発酵力を補いあう。ホシノだけだと麹の風味がやや強い感じがあります。ルヴァンリキッドを入れてほどよい酸味を出す。湯種はプレミアムTの甘みを引き出し、生地のボリュームやもちもちした感じを与えます」

粉と同量の水を加える水分の多いベーグル。ミキシングはL4分、M3分。この日、上道さんにとっても新年度産のミナミノカオリにはじめて触れる。それもあって、水の一部をとっておいてバシナージュ(足し水。ミキシングの後半で生地の様子を見ながら少しずつ入れていくこと)。
「足す分は20%ぐらい。新麦ですけど、水はぜんぜん入らないことはないですね。だんだんつやつやになってきました。生地のできあがりはつやつやになったかどうかで見極めます」

▼捏ね上げた生地

捏ね上げ温度は30℃。ノータイム法(一次発酵をとらない)で作る。
「このまま分割にいっちゃいます。天然酵母でやってるんで、のびのびやったほうがいいかな。俺自体ゆるい人間なんで(笑)。生地の半分が種なので、すでに力はだいぶあります。ノータイムのいいところは、野菜を入れても、発酵が影響を受けにくいこと。ほうれん草を入れたり、バジルを入れたり。オリーブオイルやチーズやコショウも入れると、下味がついておいしいです」

▼分割後の丸め

分割は100g。
「丸めはそんなに締めずに。締めると強くなっちゃうんで」
水分を入れ、ミナミノカオリのしなやかさを活かした、やわらかい食感のベーグルが狙い。

輪っかの形に成形。あとで膨張する分を考えて、穴は大きめにあけるのがコツ。ホイロはノータイムだった分を加味して長めに。

ベーグル特有の、焼成前にお湯をくぐらせるケトリングは行わず、おもしろい方法で、それを補う。窯入れ前に、天板の上に置いたベーグルに霧吹きし、焼成でもスチームをたっぷり入れる。また、焼成後にもう一度霧を吹き、さらに上からもう一枚天板をかぶせてふたをする。
「蒸らして水分が逃げないようにします。お菓子屋さんが熱いうちにシロップを打つのと同じ効果。ソフトなパンのやわらかさじゃなくて、食べやすい食感になるんですよね」
なお、焼成は、上火270℃、下火220℃と高めの温度で行う。高温短時間で水分を閉じ込める。

▼焼成後に霧吹き

食べてみると、歯切れよく、やわらかい感じの中に、もっちり感があった。新麦らしく、濃厚なでんぷん質のフレーバーの中に少し青っぽさが入り交じっていた。副素材が少ないシンプルなパンであるベーグルは、小麦の味わいを表現するのにうってつけ。素材の風味を大切に考える人に作ってほしいアイテムだ。

▼熊本県水俣産「天の紅茶」を練り込んだバージョン

▼ミルクコンフィチュールとともに

TEXT & Photo:池田浩明

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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