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パン作りをする人のためのパンキッチン

パンデュース 米山雅彦シェフに聞くパン作り(後編)


前回に続きパンデュース米山雅彦シェフ(以降シェフ)にお話を伺います。経営者、職人、個人、それぞれの立場から“パンを焼くこと”への考え方や想いをお聞きしています。

▼さんだ
シェフのパン作りに於いて「おもしろさ」はキーワードですね。よねやまパンのエッセンスとして活きているように感じます。ところで、今や大人気店となった大阪・本町の本店はオープンして12年経ちました。パンデュースのパン作りで変わらず大切にされていること、心掛けていることはありますか?

▼米山シェフ
考え方は1種類じゃないけど、ある食材と出会ってそれを使いたいと思った時で言うなら、具体的なイメージをもって動くパターンもあれば、とりあえず使ってみて落とし込むパターンもありますね。
大切にしたいのは、自分の中で腑に落ちるポイントを持っていること。おもしろさがあるのが「パンデュースらしさ」なので、パンの名前がおもしろいのでもいいし、ある食材を使うことに意味があるのでも。それが小麦の場合は製法だったりします。時間や手間をかけるところが腑に落ちるポイントかどうか。なにかしらひとつ、おもしろいポイントがあるかどうかが鍵かな。

▼さんだ
「面白ポイントを2つはレッスンの中に入れる」エピソードにも繋がっているわけですね。店舗運営という枠の中ではいかがでしょうか。パン=商品ですので、工程や生産性も重要なポイントになってくると思うのですが。

▼米山シェフ
先程の話にも重なりますけど、ほぼイメージを持ってから手を動かすようにしています。そこでは生産性も考えるし、ものに対する考え方も必要なわけです。
たとえば午前中に焼き上げたいけど、窯もホイロが空かないのもだめ。作業工程の中で落としどころを考えて決めていきます。レシピは一番後ですね。それからテストをして、微調整をして…。パンデュースとして、商品として、存在する意味があれば作ります。

▼さんだ
建築家や芸術家のような印象を受けるのは私だけでしょうか‥。以前「店売りの工程に、はまらない製法だったら選べない。」と伺った言葉も印象に残っています。

▼米山シェフ
そうですね。生地(工程)の種類は増やさずに、今ある生地(工程)の中でバリエーションを豊かにする、素材でバリエーションを加えるアプローチの仕方がありますから。
とはいえ、想いもあるし工程で判断する場合もありますよ。絞るパン、新しく作るパン。無駄なく効率的にパンを作るということも必要で、大変なことです。

▼さんだ
(今は売られていない)あのパンを食べたいです!なんて言ってごめんなさい…。新作パンや季節限定パンを、のほほんと楽しみにしていて…なんだか申し訳ないような。あ、でも最近新作の大型パンが本店にお目見えしていましたね!

▼米山シェフ
「カントリーブレッド」ね!昨年サンフランシスコへ行った際に感じたんです。大きくおおらかに焼かれたパンが日常にあったらいいな、って。

▼さんだ
早速いただきましたよ。個人的な感想ですが、「○○ブレッド」という名前がパンデュースでは珍しくて新鮮!新顔なのに定番ラインナップかのような雰囲気を醸し出しているのも、さすが。ぜひ「カントリーブレッド」を知らない方々のためにご紹介いただけませんか。

▼米山シェフ
「思いっきり焼きこんで、外側がガリっとして内側はしっとり。高加水の生地で力はないけど縦に伸びる内層で、小麦の甘味はあるけど雑味もある、雑味の裏側に酸味のある感じ」のパン!!イメージとしてはもう少し、バリっとしたものを描いていたんですけど‥日本の気候かな…。
今、店頭に並んでいるものは北海道の小麦農家 土倉さんのスムレラを主に使っているけど、十勝の小麦農家 中川さんのオーガニックスムレラで作る時もあるかも、というところかな。

▼さんだ
オーガニック=天然の肥料を使用したもの、自然農法=農薬や肥料を一切使わない、ということでしたよね。農家さんのお名前は商品のポップにも書かれているので耳馴染みがあります。

▼米山シェフ
そうです。オーガニックをベースに考えながら、個人の農家さんとのお付き合いを大切にして、パンを焼いていけたらいいですね。十勝自然農法で作られている小麦を店で石臼挽きをしてパンを焼く構想もあります。「Farm to table」のように「Farm to bread」を広げられたら。

▼さんだ
シェフの中には、たくさんの可能性と「おもしろさ」を秘めていますね。今後のパンとの関わり方はどのように考えていらっしゃいますか?

▼米山シェフ
10年先ということであれば、1/3は職人、1/3は経営者、1/3は自分の時間かな。仕事としてその中でパンを焼くのも好き。でもいつかは、暮らしの中にパンがある、というのがいいですね。自然の流れのなかで、自分の中の暮らしを見つめたいかな、と思う。
パンを焼きたいのはワガママかもしれないけど、自分の、ほんとうに焼きたいものを見つけたい。粉の挽き方で、こんな水で、こんな酵母で…そういうパンに出会えたらいいな。“毎日これを焼くということが幸せ”だと思えるものに出会えたら。

たくさんの話を聞かせていただき、改めてありがとうございます。おもしろさのエッセンスの詰まった、美味しいパンデュースのパン。米山シェフのパン作りは器用さとセンスを兼ね備えているからこそ、とも感じ受けますが、それだけではない魅力を今回のインタビューを通してお伝えできれば嬉しく思います。

※文中に紹介されたパンデュースの「カントリーブレッド」は、本店(本町)のみ週末限定で販売されているそうです。

>パンデュース 米山雅彦シェフに聞くパン作り(前編)

店名 パンデュース>
電話番号 06-6205-7720
営業時間 平 日:8:00-19:00/土曜日:8:00-18:00
定休日 日曜日
住所 大阪市中央区淡路町4-3-1 FOBOSビル1F
大阪市営地下鉄御堂筋線 本町駅2番出口徒歩4分
その他 add PAINDUCE 淀屋橋odona店
de tout Painduce 大阪店(梅田)
de tout Painduce 新大阪店(JR駅改札内)



TEXT&PHOTO: Yumiko Sanda

家庭製パン講師として、自らパン教室を主宰する、さんだ ゆみこさん。ブーランジェリーシェフとの交流も広く、様々な活動されています。さんださんは、「自宅で作るパンのいいところは、自分で選んだ安心の素材で自由に焼き上げたパンを大切な人と食べるひととき。」 と言います。
日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。

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