日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。
今回は少し雰囲気を変えて、ホームページ「L’atelier painSanddy」のDIARYでは書かないけれど、アトリエではお伝えしている(たぶん)、レシピを考えるときのはなしを。
パンを焼くのが楽しくなってきたら、レシピの具材を変えたり、分量を増やしたり、アレンジもしてみたくなります。最初のうちは気軽にアレンジしていたのに、深く考え始めたら迷路に迷い込んだ感覚になった、なんてことありませんか?
わたしも何度となく‥ありました。単純に置き換えられるものもあれば、そうでないものもあるんですよね。ベーカーズパーセント(配合)を変えると生地の固さや出来上がりの食感に影響することもあるし、混ぜ込み具材を変えると素材によってはバランスが悪くなる場合も。
基本とアレンジ、そしてオリジナルの考え方
パンのアレンジはお料理と似ているのかなと思います。家庭で作るお味噌汁も、具材やお出汁、お味噌の種類を変えたりするけれど「基本の作り方」がありますね。
粉や酵母の種類、発酵温度、かかる時間の長短やイメージするパンの質感などで配合は変わるけれど、“基本的なかたち”がベースにあります。
アレンジしていろんなパンを焼くのなら、まずお気に入りのレシピ(配合)を見つけてみてはいかがでしょうか。パンオレ生地ならこれ、パンドミ生地なら、バゲット生地ならこれ、というように。そして配合の理由がわかると、きっと、もっとたくさんの楽しみ方ができるはずです。
ところで、新しくパンのレシピを考えるとき、すべてを1から組み立てるのかというと、そうでもあるし、そうでもないように思います。基本となるレシピは存在するのに、自分のレシピと言えるのかな、と悩むこともありました。
そんなとき、あるシェフが「配合、分割量、混ぜ込み具材の種類や分量には、想いがあって決めているのだよね。意思のあるものなら、あなたのオリジナルのはず。」と一喝してくれました。心強くも有難い一刀両断ですね。
『こういうパンが食べたい』というイメージ
私にとって『こういうパンが食べたい』というイメージを明確に持つことは、とても大切な作業です。
例えば、2017年2月のアトリエメニューでもあるクッキーパン(ショコラのメロンパンとアールグレイのメロンパン)の場合。
生地の方は‥クッキーパンやアンパンはパンオレが合うはず。レッスンは手捏ねだから捏ねにくくない範囲の、多めの水分でパサつきのないように。歯切れよく、やや甘味のあるパン。‥というようにパンオレを基本にします。
食べた時は‥味の一体感を感じつつも個性を出すのはどこだろうか。カカオ味のパンは、ショコラのクッキー生地に負けない、しっかりした味わいが合いそう。アールグレイのクッキー生地に比べて、パン生地は控えめに香るくらいがいいのかも。‥とアレンジを考えて試作。
あとは食感や味のバランス、余韻などをイメージしているところに合わせつつ、レッスン行程で不備がないかを確認。美味しいと思うパンを食べたい一心で、ひたすら試作してブラッシュアップさせていきます。
とはいえ知識も経験もまだまだ未熟で、試作が多いのが難点です。失敗を重ねて問題点や課題を知るご褒美?もありますが、2~3回でビシっと決められたらどんなにいいでしょう‥。こんなふうに書いていると、美味しくなきゃイヤ!と言わんばかりの食いしん坊のようで、なんだか可笑しいですね。
TEXT & Photo: Yumiko Sanda