パン探偵ファイル

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misson:
幻の小麦・ハルユタカのパンレッスンに潜入!

2016年3月10日、ハルユタカの30周年を記念したパンレッスンが、東京・自由が丘のクオカスタジオで行われた。講師は、ブーランジェリーレカンの割田健一シェフ。 ハルユタカのバゲットは、「ポーリッシュ種」で作られる。事前に小麦と水とイーストで仕込んだ種を使って発酵をとる、クラシックな製法だ。

「ポーリッシュは液種のことです。きのう種を仕込んで、90分発酵をとりました。5℃以下の冷蔵庫で一晩寝かせます。はるゆたかはポーリッシュがいちばんおいしいんじゃないかな。」

ボウルの中に材料を入れると、割田シェフは手を入れてかきまぜはじめた。

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「(ポーリッシュを割田シェフに教えた)フランス人に、手でやんなかったら怒られた。それ以来、ポーリッシュは必ず手でやります。ただ混ぜるだけではなく、生地にする。最近はみんなオーバーナイトばかりで、ポーリッシュをやってる人がなかなかいないけど、昔の製法をやってみると発見がある。ベーシックなものはおいしいと思います」。

「つやがでた状態でこねるのをやめて発酵をとります。発酵が終わったら、冷蔵庫にしまう。生地がいちばん盛り上がったところでしまいたい。(ふくらみきった生地が割れて)一度沈んだほうがいいという人がいるんだけど、それは生地の力が弱くなっていると思います」

ニーダーもミキサーも持たない人でもできるように、割田シェフはバゲットを手ごねで作った。

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「手仕込みのほうがハルユタカの粉の香りがもっとしますね。手ごねでやると生地はゆるくなるに決まっているんだけど、うまくそれを活かせば口溶けのいいパンになります」

作業台に粉と塩を広げ、その山の真ん中に噴火口のように穴を作って、そこに水を注ぐ。手にくっつき、まとまらないかのように見えていたが、鮮やかな手さばきでやがて生地となっていく。

パン探偵ファイル 「家庭用のオーブンできれいにパンを焼くのはむずかしいですね。パン屋さんは、たったバゲット2本のために生地を仕込むことはないですし。クープをうまく割るためには、(最終的に上になるほうを)逆さまに、下にする。昔はみんな逆さだったんですよ。パンの原点ですね」

パン探偵ファイル ハルユタカのバゲットは感動ものだった。
皮がばりばりと割れ、ハルユタカならではの風味や野趣にあふれかえっていたのだ。素材を活かすことは、こんなにも食べる幸福に直結すると、改めて感じさせた。

もう一品はハルユタカのカンパーニュ。
ハルユタカの白い小麦粉、全粒粉、粒、と同一品種で3つの状態の素材を使う珍しい試み。割田シェフからハルユタカへのオマージュであり、口溶けの時間も風味も異なるものを使うことで同一品種で複雑な味わいを奏でようという2つの狙いが込められている。
パン探偵ファイル ランチを担当したのは、「出張料理人」の岸本恵理子さん。彼女もまた30周年を祝うため、ハルユタカを使って料理を作った。 パン探偵ファイル 「イタリアでは丸麦(粒の状態の麦)を使った料理を食べる文化があります。大麦やスペルト小麦をゆでてサラダに入れたり、リゾットにしたり、スープに入れたり」

前菜はハルユタカのサラダ。
「丸麦をサラダ仕立てにしました。トスカーナ産ひよこ豆にフェンネル、でこぽん。中部イタリアでは、スペルト小麦をサラダ仕立てで食べるんですね。 」

ほろほろ鶏のラグーにはスープで炊いた丸麦のハルユタカが使われている。ほろほろ鶏を丁寧に裂いた、絶品の料理だ。

そして、ハルユタカを打って、ペンネ状にしたパスタ。
「石臼挽き全粒粉を使って、ハルユタカのパスタを作りました。ハルユタカの白い粉には、生地がべたついていて扱いがむずかしい感じがあったんですが、石臼挽きでやってみたら練りやすいし、成形もしやすい。味の複雑さも増して、味わい深くなりました」

北海道から、江別製粉の安孫子社長と、江別市の小麦農家である萩原秀樹さんも来場、30年の歩みを語った。

「国産小麦でパンは作れない」というパン業界の定説を覆したのは、ハルユタカが登場してからだった。ハルユタカ2000tのうち7割が江別市で生産される。病気に弱く、穂発芽のリスクもあって、「幻の小麦」と呼ばれるほど生産が不安定なこの品種を、江別市の農家たちが辛抱強く作り続けてきたのだ。小麦農家、製粉会社、パン職人、そして私たち。まるでリレーのバトンのように、私たちの手元に届くまで、いろんな人たちの手を経て小麦は届けられる。その人たちが一同に介し、こうして語り合い、それぞれの仕事を知り、尊重しあえるのが、国産小麦のすばらしさなのである。

名称 ブーランジェリーレカン
電話番号 03-5565-0780
住所 東京都中央区銀座5-11-1 1F
営業時間 10:30~21:00 最終焼き上がり20:00
定休日 なし