レッスンはいつも満員の、人気パン講師・堀田誠さん。
教室にいる人みんながわかりやすい、ソフトな語り口。
のみならず、師匠・志賀勝栄シェフ(シニフィアン・シニフィエ)譲りの高度な理論で、上級者も非常に参考になるレッスンを展開する。
昨年9月16日、東京・自由が丘のクオカスタジオにて行われた「cuoca × 新麦コレクション スペシャルレッスン」から、新麦の桑名もち小麦(三重県産)を使ったプチリュスティックを紹介。
◆いつものパンをもちもちにするには
桑名もち小麦とは、どんな小麦なのだろう。
「でんぷんの性質がおもちに近いんじゃないのかな。
使い方としては、『この小麦はパンをおもちにするパウダー』と思って、いつも作っているパンに練り込んでみてください。
上手にできる人は3割、むずかしいかなと思う人は2割を差し替えていただくと、いままでのパンがとってももちもちするからね」
水分の多い生地を手ごねでパンにする堀田さん。
今回も水分を80%、新麦の桑名もち小麦と熊本県玉名産の新麦「PremiumT」を50%ずつ、イースト、モルト、塩も加え、ボウルとゴムベラを使って混ぜる。
「がさがさっと混ぜないで、めちゃめちゃやさしく混ぜて、お水の中に粉を溶かし込むんだ。
ちょっとずつお水をにごらせてあげる。
土手を崩しながらじわじわ混ぜてあげる。
水と粉が7、8割まで混ざったら、今度はひっくり返しながら混ぜてみます。
ゴムベラで下を削ってはひっくり返す。
これを切り返し混ぜと言います。
やさしく混ぜてください」
捏ねあげ温度は23℃。
「捏ね上げ温度が高すぎると、発酵しすぎてグルテンがこわれやすくなります。
フランスパンは温度を低く抑えます」
ボウルにラップをかけて15分おき、パンチ。
「スケッパーを生地の下に入れて半分ぐらいのところまでいったら、スケッパーを持ち上げてやさしく生地を重ねます。
今度は反対から。
生地がゆるまないように、やさしくロックをかけるイメージ。
このとき生地をどれぐらい伸ばすかによって、強いパンチにも、弱いパンチにもなるんだ」
◆水分量が多い時・酵母が少ない時、捏ねのコツ
つづいて、15分後にもう一度パンチ。
さらに15分後、今度は2本の指でひっかけてパンチをする。
これらのパンチはグルテンを強くする意味がある。
「ふくらんできたら生地を指で押してみると、落ちてしまいますよね。
これは生地が弱いってこと。
パンチで生地を強くしてくださいって合図なんだ。
最初から強くかきまぜすぎるとグルテンが硬くなって、余計にふくらまなくなるジレンマに陥ってしまいます。
なので、こねるときはやさしく。
そのあと、パンチで強くしていこう。
水が多いときや酵母が少ないときは、こういう作り方をします」
一次発酵は、30℃で60~75分。
終わったら、分割・成形。
長方形に整えた生地を、左右から中央で折り合わせ、同様に手前と向こう側からも折り合わせ、ひっくり返して6分割。
切りっぱなしで成形は終了。
最終発酵はとらずに、そのままクープを入れて焼成すれば、リュスティックは完成。
桑名もち小麦特有のもちもち感に、加水の多い生地に特有の口溶けよさ。
やさしくこねたせいか、小麦の風味もよく表現されていた。
堀田さんは、新麦の意義についてこう説明する。
「日本には、秋祭りという収穫をお祝いする風習がありますよね。
また、新米とか新そばと名付けて新しいものを楽しむ文化もあります。
新麦のよさは、収穫のよろこびをみんなで分かち合えること。
今年の小麦はどんな感じなんだろうって、楽しんでもらえたらいいですね」
◎堀田誠さんの主宰するロティ・オラン東京
https://m.facebook.com/ロティオラン東京-168086086717340/
◎堀田さんの著書「誰も教えてくれなかった プロに近づくためのパンの教科書」
(amazon.co.jpへ移動します)
<お知らせ>
「とれたて、挽きたて!新麦2017」はcuocaで開催中
桑名もち小麦、熊本県玉名産PremiumTの新麦はcuocaで買うことができます。
この機会にぜひ新麦に触れてみてください。
TEXT & Photo:池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki