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パン作りをする人のためのパンキッチン

川越ベーカリー楽楽「彩の国地粉食パン」を調査!


山崎豊シェフ(元ジェラール・ミュロ)が伊原靖友シェフ(Zopf)、井上克哉シェフ(ブーランジュリー オーヴェルニュ)に呼びかけ、震災後から行っているチャリティ製パン講習会。今回は、直近の第14回をレポート。埼玉を代表する人気のパン屋さん、川越ベーカリー楽楽の菅沼健太さんがゲスト講師となった。

埼玉県産小麦「ハナマンテン」を使う

東京からほど近い埼玉県川越市でもパン用の小麦が栽培されている。楽楽では地元の小麦「ハナマンテン」を使って「彩の国地粉食パン」が作られる。

「ハナマンテン(前田食品)35%、ゆめちからブレンド(江別製粉)65%をブレンドします。ハナマンテンで食パンを作るのは最初うまくいかなかったのですが、ゆめちからがでてきて、この食パンが誕生しました。ハナマンテンの吸水は弱め、タンパクも弱いので、ゆめちからと合わせてバランスのいい配合にしました」

他に、フランス産イズニーのバターや、はちみつ、ルヴァンリキッドも入る、贅沢な配合である。

ミキシングで押さえておきたいポイントとは。
「水はぜんぶ入れないで少し残してください。国産の場合、季節によって水が入らないことがあるので、入れすぎた場合取り返しがつかない」

埼玉県産ハナマンテンの特徴について。
「ハナマンテンはアミノ酸がクラストの香りをよくするので、ハード系にも向いています」

小麦は、品種それぞれに異なるアミノ酸が含まれている。ハナマンテンに含まれるアミノ酸は、オーブンの中で焼いたとき起こるメイラード反応(赤茶色に焼き色がつく)において、一種独特の香ばしさを作りだす。

前田食品の入江さんはハナマンテンについてこのように語る。
「超強力小麦はゆめちからが有名ですが、いちばん最初にデビューしたのはハナマンテン。10年前から栽培されています。超強力小麦はグルテン同士の結びつきが強い特徴があります」
グルテンの網目が緻密にできるのでガスをより保持しやすく、パン作りに向いているのだ。

▼菅沼健太さん(左)と、右は楽楽のオーナーシェフ上野岳也さん

「食パンの生地は6℃で仕込んで27℃でこねあげ、フロアタイムは60分。1玉200gで分割します。分割して20分ベンチタイムをとったら、型に詰めます。最初にガスを抜いて、半分半分に折って、それから巻いてください。3斤型に6個詰めます」

1時間余りの最終発酵のあと窯入れ。約30分後、次々と窯からおいしそうな食パンが出てきた。耳が甘くて香ばしく、食感はふわふわもちもち。ゆめちからの食パンとはひと味ちがう、埼玉の味だった。

楽楽の向かい側に昨年オープンした「サンドイッチパーラー楽楽」。ここでも彩の国地粉食パンは使用されている。
「焼成はコンベクションで行っています。そうすると、耳が薄くなって、サンドイッチに向いた食パンになります。バリエーションとして、ほうれん草のパウダーを混ぜて、緑色の食パンにしたり。ボイセンベリーで紫の食パンにしたり。具材との組み合わせによってはすごくいいサンドができます」

イタリアの揚げパン「ゼッポリーニ」を楽楽流にアレンジ

楽楽では毎月楽しい新作パンが出る。観光地に位置するパン屋さんらしく、川越にちなんだパンなど、アイデアが楽しい。ゼッポリーニも他のベーカリーでは見かけないパンだ。

「ゼッポリーニはイタリアの揚げパンです。ナポリで食べられる、海草を使ったパン。うちではあおさを使っています。川越の中市本店という江戸時代からつづくかつおぶし屋です」

ゆめちからブレンドとドルチェ(江別製粉の菓子用粉)を50%ずつ配合、あとは塩とパン酵母(イースト)だけというフランスパンのような生地。

「あおさだけは最後に入れます。あとの材料はオールイン。あおさが軽く混ざれば完成。簡単なレシピだと思います」

生地にあおさを混ぜ込むと、すばらしい香りがミキサーのまわりに漂った。

「お店ではいっぺんにたくさん仕込んで、生地の状態で冷凍(4℃)しています。状態がよければ1週間もちます。前日の夕方に冷蔵庫に移し替えて使います」

当日の朝に冷蔵庫から出し、常温で18~20℃に戻しつつ最終発酵。180°で裏表それぞれ2分ずつ揚げて完成。油の中で生地がふくらんで、おいしそうなきつね色になる。

あつあつのゼッポリーニを食べる。もちもちして、あおさの香りが口の中で沸き返る。これを食べながら、川越の町を歩いたら楽しいだろう。そんなことを想像した。

◆第15回チャリティ製パン講習会のお知らせ
2017/4/27(木)開催
(ゲスト講師:根本孝幸シェフ[ネモベーカリー&カフェ]、森本まどかさん[アトリエタブリエ])
【詳細・お申し込み】
http://panlabo.jugem.jp/?eid=2100

◆新麦コレクションプロデュース「小麦が主役のパンレッスン」
2017/9/03(日)開催
「川越ベーカリー楽楽」の上野シェフが教える埼玉県産小麦を使ったパンレッスンを、Happy Cooking東京本校で行います。
【詳細・お申し込み】
http://www.happycooking.jp/course/16008

◆新麦コレクション@Happy cooking埼玉企画 川越小麦畑(原農場、ハナマンテン)+パン屋ツアー(川越ベーカリー楽楽・ブーランジェ リュネット)
2017/6/10(土) 開催
パンラボ池田浩明といっしょに、小麦畑と楽楽など川越のおいしいパン屋さんを巡る川越ツアーも開催します!
【詳細・お申し込み】
http://www.happycooking.jp/course/16001

TEXT & Photo:池田浩明

Profile 池田浩明
パンライター。パンの研究所「パンラボ」主宰。ブレッドギーク(パンおたく)。パンを食べまくり、パンを書きまくる。日々更新されるブログ・twitterでは、誌面で紹介しきれないパンの情報を掲載中。主な著者に『パンラボ』(白夜書房)、『パンの雑誌』(ガイドワークス)などがある。
【BLOG】http://panlabo.jugem.jp/
【Twitter】@ikedahiloaki

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