日々、教室を運営しながら自らも学び、パンに触れる暮らしの中での気づきや、パンを楽しむ皆さんへ伝えたい事を綴っていただきます。アトリエへちょっと立ち寄るような気持ちで、ご覧くださいね。
パンの紹介をするとき何気なく、パンオレ生地、折込生地と説明しています。でもふと考えたら、パンを習い始めた頃は、まだその分類についてよくわからなかったことを思い出しました。
フランス語の“PAIN”は食事と共に食すパン、“VIENNOISERIE”は菓子パンの総称、と分けられています。リーンなパン、リッチなパンという分類と同じではないでしょうか。
今回は耳馴染みのある生地の区分けや、種類などをご紹介します。
リーンなパン [lean=油脂が少ないパン]
基本材料(小麦粉、水、塩、酵母)から生地が作られるもの。バゲットやカンパーニュ、ライ麦パンなど。ハード系とも言われる、柔らかいパンに対する『硬さ』のある生地。
リッチなパン [rich=“豊富な”“コクのある”、パン]
副材料(砂糖、卵やバター、乳製品など)の多く入り生地が作られるもの。副材料にはパン生地にやわらかさを与える性質があるため、ソフトな口当たりの『柔らかな』生地になる。
ここからは、リーン(lean)な生地から順番に、リッチ(rich)な生地のパンを紹介します。 パンの名前も参考までに。
バゲット生地 [baguette]
粉、水、塩、酵母から作られる最もシンプルなパン。粉の味わいや生地熟成によって得られる旨みがある。バゲット、バタール、フィセル、エピなど
セーグル生地 [seigle]
ライ麦の配合された生地。パン・オ・セーグル、パン・オ・フィグやノワ・レザンなど。ドイツパンの“~ブロート(brot)”は、製法や発酵種が異なるため、セーグル生地とはちがうもの。
パン・ド・ミ生地 [pain de mie]
フランスで言うパン・ド・ミは、ややリーンなものが多く、日本での呼称は同じでも、日本人の私たちが想像するしっとり口どけ滑らかなパン・ド・ミとは棲み分けされているように感じる。日本で言うパン・ド・ミ=食パン生地と、私は捉えています。サンドイッチ用のバンズや塩パン、カレーパン、クロック・ムッシュなど。
パン・オ・レ生地 [pain au lait]
牛乳で生地捏ねをしたもの。上のものと比較すると副材料も多く含まれることから、甘みとやわらかな食感がもたらされる。配合はブリオッシュに近いリッチなものから、リーンに寄せたものまでさまざま。メロンパン、フィリングを包んだり挟んだり塗ったりしたもの、オヤツのように食べられる甘いパン、カレーパン、サンドイッチ用のバンズなど。
折込生地 [croissant]
折込発酵生地。生地とバターの層を幾重にも重ねることで、オーブンの中で生地が一気に持ち上がり美しい層が生まれる。外側の軽やかな食感と、内側のミルキーな味わいのコントラストが特徴のヴィエノワズリー。
パン屋での折込生地は、クロワッサン生地またはデニッシュ生地。クロワッサン、パン・オ・ショコラ、エスカルゴ、デニッシュ、クロッカン、クイニーアマン、ショソンなど。(最後の2つは折込発酵生地ではない店もある)
ブリオッシュ生地 [brioches]
基本的には卵とバターで捏ね上げるため、サクッとしながらも、芯に近い部分には、ほどよいしっとりさを併せ持つ、バターの芳醇な香りが特徴のヴィエノワズリー。卵とバターを調整し水分が入るなど、店により配合は異なる。ナンテール、ブレッサンヌ、クグロフ、ボストーク、タルト(土台)、メロンパンなど。
ひとつの生地から派生するパンのアレンジは、さまざま。たとえばパン・ド・ミ生地を丸く成形し、具材を挟むサンドイッチにすることもあれば、パン・オ・レ生地で作るところもあったりします。パン・オ・レ生地からアンパンを作る店もあれば、もう少しリッチな配合の菓子パン生地から使い分けたり。それはシェフの想いや、店の作業行程などから工夫を凝らし、バリエーション豊かにパンの楽しさを届けてくれるものです。
アトリエのレッスンでも基本の生地を作り、フレイバー違いや、別のパンにアレンジする回があります。作りやすい配合やお気に入りの生地があれば、アレンジを楽しんでみてはいかがでしょうか。皆さんのパン作りに、お役立ていただけたら。
TEXT: Yumiko Sanda / PHOTO: Pain Kitchen